福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)141号 判決
被告人は昭和二七年五月二二日鹿児島地方裁判所川内支部で傷害罪により懲役八月に処せられ同判決は同年六月六日確定し、昭和二四年六月一六日同裁判所において強盜、傷害、住居侵入罪により懲役三年に処せられ同年七月一日確定しいずれも当時右刑の執行を受け了つたものであることが認められるに拘らず原判決にはその事実を示していないことは所論のとおりである。元来刑事訴訟法第三八二条にいわゆる事実誤認の「事実」とは犯罪構成要件たる事実を指称するものであるけれども刑の累犯加重或は執行猶予排除の要件となる前科に関する事実は犯罪構成要件の要素ではないから罪となるべき事実ではないけれども該事実の有無は刑の量定に消長を来すものであるから該事実の存在が判決に影響を及ぼすことが明らかな場合には右事実を判決に説示しなければならない。しかして被告人には前示前科が存在し原判示事実の刑に対し累犯加重をなすべきでありまだこれに対して刑の執行猶予をなすことはできない場合であるにかかわらずその判示を遺脱したことは判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認をしたものといわなければならない。論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。
(後略)